2011年12月29日

とこしへのみよ

本書は、南出喜久治先生の主著『國體護持總論』第三巻「皇室典範と憲法」が原典であり、緻密な憲法学的論証に基づいた論が構築されている。

まずは、破棄不成立無効など当該の法律用語の概念を規定した上で、占領典範と占領憲法の無効理由をそれぞれ列挙。

そして、改正無限界説八月革命説承詔必謹説などの占領憲法を有効とする説を論駁。これらが、如何に論理的整合性を欠く謬説であるかを明示している。

真正護憲論、つまり、帝国憲法の現存を明らかにしつつ、占領憲法を講和条約の限度内で認める、講和条約説を展開している点において、旧無効論の弱点を超克している。

帝國憲法は、明らかに、現存する。何故ならば、サンフランシスコ講和条約/桑港条約、の締結は、交戦権を否定している、GHQ占領憲法/通称日本国憲法、では為し得ないこと。帝國憲法に基づき締結されたのは、明々白々である。

講和条約説とは、憲法の名を借りて跳梁する占領憲法は、帝國憲法第76条第1項の無効規範の転換により、憲法としては無効であるが、講和条約としては有効とするものだ。

大日本帝國憲法第76条、法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス

これにより、真正護憲論は、現行法の法的安定性を確保している。

GHQは、占領統治期間中、民主化の美名の下、検閲、言論統制、皇権剥奪、公職追放という非民主的な手段で日本弱体化工作を行い、一環として占領典範と占領憲法を強要した。

斯くの如き西欧植民地主義者による暴挙は、我が國が二千数百年かけて築き上げた規範國體を破壊する行為であり、断固として排除しなければならない。

此の一点を挙げても、本来、GHQ占領憲法は無効に帰するべき存在である。真正護憲論は、唯占領憲法を無効として帝國憲法を護るにみならず、其の背後にある規範國體を護る國體護持の尊い精神に基づいて構築されている。

我等は、連合国の無法行為を此れ以上許してはならない。国体を護持し、国家としての道理を正す使命を負う。二千年を越す我が國の悠久の歴史において、占領憲法下の66年など物の数ではない。一刻も早く占領憲法の無効と帝國憲法の現存を宣言して、矍鑠とした伝統国家の姿を世界に示そうでないか。

規範国体の最高規範性、根本規範性からして、GHQの完全軍事占領下の「非独立」状況で制定された「日本国憲法という名の「占領憲法」は、規範国体に違反しているので、最高規範及び根本規範としては無効である。つまり、少なくとも、その名称とは無関係に、正統憲法に属する規範ではないということである。

そもそも、占領憲法と占領典範の制定は、東京裁判(極東国際軍事裁判)の断行と並び、我が国の解体を企図したGHQの占領政策における車の両輪とも云うべき二大方針として敢行されたものであり、それがいかなる論理や手続によったものであったとしても、占領憲法と占領典範の無効性は、これが最高規範、根本規範である規範国体に違反することだけで必要かつ充分な根拠となるのである。

私見によれば、占領憲法は、国内系の正統憲法としては認められないが、帝国憲法第七十六条第一項により、国際系の講和条約の限度で認められるものである。つまり、端的に言えば、占領憲法は憲法としては無効であり、講和条約の限度で認められるということである。その理論的な説明の詳細は次章に譲るが、本章では、占領憲法の無効性を中心に述べ、講和条約として評価できる点についてはその骨子を概観するに留める。そして、これらの理論体系に必要となる法令上の主要な根拠としては、帝国憲法の第十三条(宣戦大権、講和大権、一般条約大権)、第七十三条(憲法改正の発議大権と改正手続)、第七十五条(憲法改正禁止条項)、第七十六条第一項(適正法令の評価規範であり、さらに、第八条(緊急勅令)、第十一条(統帥大権)などであることに注目されたい。

無効理由については、前に述べたとおり、国体論、主権論、成立要件論、効力要件論、有効説批判の五つに分類されるが、要素還元的に論述することが困難であることは占領典範の無効理由の場合と同じである。また、占領憲法の無効理由は、占領典範の無効理由と共通する点も多く、これまで述べた占領典範の無効理由に付加する点もある。従って、以下においては、占領典範と共通する無効理由として重複するものも含めて、事項毎に羅列的に述べることとする。

なお、前にも説明したが、以下の十三の理由のうち、「無効理由その十二」と「無効理由その十三」の二つについては、占領憲法固有の無効理由であり、その余の無効理由その一からその十一はすべて占領典憲共通の無効理由である。

新刊『とこしへのみよ』より。


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